SOHKO RENOVATION MAGAZINE

CASE STUDY

事例

芝浦は日本のSOHO、
完璧主義者のためのピアノと
特別な空間

Piano Salon

世界中の一流ピアニストが訪れるピアノサロン
絶妙な音色で世界の一流ピアニストをとりこにするピアノメーカー、FAZIOLI(「=以下ファツィオリ、イタリア」。量産はせず、高級グランドピアノのみを制作することで知られる。ピアノで最も有名なスタインウェイをパフォーマンス・クオリティで超えたと讃えられる同社の日本総代理店ピアノフォルティ株式会社(アレック・ワイル代表取締役)の会員制サロンが、港区芝浦にある。
倉庫をリノベーションしたオフィス兼会員制サロンで、スペースはグランドピアノを模していて、ワイル氏の並々ならぬこだわりがうかがえる。室内は、ファツィオリの高級グランドピアノにふさわしい特別な雰囲気を持った空間だ。木材を多用した温かみのある空間が無機質な倉庫の中にある、その意外性も見逃せない。

日本のSOHOのパイオニアに
「音楽と科学的知識への情熱、偉大な職人技能、技術的な研究への固い献身、そして厳選された材料を極めたファツィオリのピアノ。そのピアノは完璧主義者のためにあると言っていい。だから、ただピアノを置くだけではない、特別のサロンが必要だった」とワイル氏はこう強調する。
グランドピアノを置くための広さ、ファツィオリのリッチで、きらびやかで透明感のある上品な音色を響かせるためには、天井の高さも重要になる。同時に、大きくて重いピアノの搬出入を考えると物流面での使い勝手の良さも求められる。こういったこだわりをすべてかなえる手段が、倉庫リノベーションだったという。
設計・デザインは、移転前の同社サロン、ワイル氏の自宅も担当した田代計画設計工房の田代敦久氏。
ワイル氏は、「当社サロンは、特別なピアノのための特別な空間。ひとたび足を踏み入れれば現実を忘れ、ファツィオリのピアノを奏でることを特別な体験だと思ってもらえる空間造りがしたかった。また、現実的な面では大きくて重いピアノを搬入するには、大型エレベーターがあり、床荷重もしっかりしている倉庫物件はうってつけだ」と話す。
また、「芝浦付近はもともと倉庫街だったが、最近は住宅や店舗が増えている。1960年代後半ニューヨークのSOHOが、さびれた倉庫街からアーティスト達の活躍で注目され、高級エリアになったように、芝浦も倉庫リノベーションをきっかけに日本のSOHO、東京の文化の中心になる可能性を秘めている。われわれはそのパイオニアだと自負している」と強調している。
こうやって完成した会員制サロンの中には、スタジオも設けられている。実際に、世界の一流ピアニストが、公演前の練習やミニコンサートのために訪れている。その中には、ロシアのアレクサンドル・ルビャンツェフ(2011年の第14回チャイコフスキー国際コンクールで、優勝候補とされながらも決勝に進めず、聴衆から抗議が相次いだほどの才能を持つ。同コンクールではロシアの批評家による投票で「批評家賞」を受賞したことで話題に)もこのスタジオでデビューCD『My Favorites』を録音している。
単なる倉庫に、高級感あふれるピアノの会員制ショールームができ、世界の一流ピアニストが演奏するというコントラストが面白い空間となっている。

ピアノフォルティ ※
東京都港区芝浦
http://www.fazioli.co.jp/

※2025年現在、ファツィオリ・ジャパン株式会社に改称となっています。