column

Logistics Architecture ―物流が建築、都市を変えていく―(4)

Logistics Architecture研究会フォーラムの第4回は建築と地理学の専門家が登壇した。

日建設計執行役員先端系施設デザイン推進担当、ドキュメントデザインセンター代表の五十君興氏は「Logistics4.0時代の物流施設 羽田クロノゲートと最新物流施設」をテーマにヤマト運輸の羽田クロノゲートの事例を中心に講演した。
羽田クロノゲートは羽田の立地を生かした高速輸送ネットワークと、付加価値機能を一体化させた日本最大級の物流施設である。
主要設備は仕分けエリアと付加価値機能エリアからなり、付加価値機能は、修理・メンテナンス・アッセンブル、医療用機器の洗浄・メンテナンス、クロスマージなどからなる。
託児所、カフェ、スポーツ施設、レストランなどの地域貢献施設が備えられており、開けれた物流施設として見学コースも設置している。環境保全やセキュリティを重視している。

 

2018年に開場した豊洲市場や、香港で計画が進む、物流施設、工場、オフィスなどからなる高付加型多機能施設も紹介した。

 

そして「IOTやロボットによって、運ぶ、保管する、梱包する、手配するという物流の基本オペレーションではなく、調達や製造まで広がる付加価値を持った物流が求められる。開発・生産・流通・消費というリニアではなく、循環のなかで物流が価値を持って位置づけられる。それに合わせた施設が求められる」とまとめた。

 

首都大学東京特任助教の太田慧氏は「東京臨海部における土地利用変化とドライビングフォース-1990年代以降の動きを中心に-」をタイトルに東京臨海部の旧来の埠頭地域における土地利用の転換の事例として、港区の竹芝埠頭、日の出埠頭、芝浦埠頭を含む海岸1丁目~3丁目エリアを対象にした研究を基本に発表した。

 

世界的に港湾物流のシステムがコンテナに置き換わっていく。それにともなって旧来の埠頭の設備、港湾施設は陳腐化していく。旧来の埠頭地域の物流施設の跡地にオフィス、住宅、商業施設、文化施設、レジャー施設がつくられ、また倉庫を中心とした物流関連用地が残されているエリアでは古い倉庫を活用したスタジオやアトリエなどが現れている。

 

地価変動や港湾政策などによって再開発が促進されてきた。地域内の人口の変化が起こるとともに、都市的な土地利用と港湾物流が分離、共存しているとまとめた。

物流施設の大規模化は周辺地域との共生が重要なテーマとなる。運輸はラストワンマイルから国際物流までつながり、自動運転で大きく変革していく。また羽田周辺は大田区の羽田空港跡地整備や川崎市の殿町国際戦略拠点整備などよる大規模な開発が進んでおり、物流の重要性はより増大していく。
港区の海岸1丁目~3丁目エリアでも浜松町駅から品川駅までの範囲で大規模な開発の計画が進行中であり、既存の倉庫の価値をどう生かすかが今後、問われることになるだろう。

 

中崎 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)

【プロフィール】
五十君興(日建設計 執行役員先端系施設デザイン推進担当、ドキュメントデザインセンター代表):
1983年神戸大学大学院修士課程を修了し、日建設計に入社。単体の建築だけではなく、複合化された都市レベルの巨大建築設計まで広範囲に手掛ける。「成田空港旅客ターミナルビル」「エプソンイノベーションセンター」「羽田クロノゲート」など空港ターミナル、研究施設、物流施設における時代の最先端を切り開く施設を設計。

 

太田慧(首都大学東京 特任助教):
首都大学東京博士課程修了。専門は観光地理学、土地利用研究、沿岸地域、GIS(地理情報システム)。

 

中崎隆司(生活環境プロデューサー・建築ジャーナリスト):
生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆ならびに、展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。