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Logistics Architecture ―物流が建築、都市を変えていく―(1)

物流が建築、都市を変えていく。
物流にAI、IoT、ロボット、自動運転などが採り入れられ始めている。物流の効率化の新たなシステムの構築が行われようとしているのだ。この新たなシステムの構築が物流施設、さらに都市にどのような変化を与えるのか。

Logisticとは「兵站。企業が必要な原材料の調達から生産・在庫・販売まで、物流を効率的に行う管理システム」(広辞苑第5版)という意味である。

Architectureは設計思想に基づいて構築されたシステムの構造であり、建築に限定されて使用されることもある。

Logistics Architectureという概念で上記の多義性を持たせることができないかと考えた。

2018年4月10日に開催した第1回のフォーラムでは渡邊大志氏(建築家、早稲田大学准教授)と玉上貴人氏(建築家)を招き、議論した。
それぞれの講演を要約すると次のようになる。

・渡邊氏の講演「東京の<際>が生み出すLogistics Architecture」の要約

港湾エリアの場合、船や倉庫、そしてそれを稼働させる港やふ頭などインフラを統括する管理システムがLogistics Architectureということになるのではないか。

東京港は12航路(カリフォルニア州航路、北米西岸北太平洋航路、南米航路、中近東・欧州航路、ニューヨーク航路、地中海航路、ニュージーランド航路、紅海航路、インドネシア航路、海峡地航路、バンコク航路、中国航路)によって世界と結ばれており、次の3つに類型される倉庫群によって空間化されている。

質量備蓄価値型は主に原材料などの1次産品を備蓄する倉庫であり、港湾交通上の位置が重視される。
空容積価値型は衣料や自動車などの2次産品を保管する倉庫であり、コンテナの集積・保管、受け渡しを行う場所はこの類型に分類される。ここでは情報管理上での位置が重視される。そしてコンテナリゼーションの命題は物流の効率化であり、ものを入れるパッケージを標準化した。それによって船の大きさも標準化し、港も標準化された。
仮容器仮価値型は電子データなど質量を伴わないが、対価を払う商品を知覚するための仮の容器をストックする倉庫であり、情報と金の動きに大きく関連する。

AI、IoT、ロボット、自動運転などが採り入れられても港から人が消えることはない。メンテナンスは絶対になくならない。

・玉上氏の講演「物流施設の中に建築をつくる」の要約
臨海部にあるマルチテナント型の巨大物流施設の共用部(アメニティスペース)を手掛けている。

効率重視、モノ中心の無機質な物流施設づくりから人を中心に考えたデザインにしていくことをクライアントから求められた。

物流施設で働く層に変化が生まれつつあり、人材確保ための「建築」が求められた。子育て世代の女性が働きやすいように託児所やラウンジを設け、アメニティ施設を充実させている。

巨大空間で働いている人たちはこじんまりした空間を心地よく感じるのではないかと考えた。人の感性と身体スケールになじむ佇まい、人の感性や気持ちに訴える空間、居心地の良さ、わくわく感を喚起するような空間を試みた。

筆者はふたりの講演内容から次のように考えた。

12の航路と3つの倉庫の類型の組み合わせは東京の臨海部のLogistics Architecture(システムの構造)を読み解くカギのひとつであり、グローバリゼーションとローカライゼーションの2つのLogistics Architecture(システムの構造)が併存しているようだ。今後、AI、IoT、ロボット、自動運転などの導入によって併存するグローバリゼーションとローカライゼーションの2つのLogistics Architecture(システムの構造)は連携されていくだろう。
物流施設で働く人たちが変化している。テナント誘致において人材確保のためにアメニティスペースが重視されるようになることで、今後、もっと物流施設内にLogistics Architecture(建築)がつくられるようになるだろう。

中崎 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)

【プロフィール】
渡邊大志(早稲田大学創造理工学部建築学科 准教授):
1980年生まれ。2005年早稲田大学理工学術院建築学専攻修了(石山修武研究室)。同年、石山修武研究室個人助手。2012年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(伊藤毅研究室)。博士(工学)、一級建築士。2016年より現職。専門は、建築デザイン・都市史。
株式会社渡邊大志研究室一級建築士事務所主宰、世田谷まちなか観光交流協会委員、港区景観審議会委員。
主著に、『東京臨海論ー海からみた都市構造史ー』(東京大学出版会、2017)など。

玉上貴人(建築家):
1973年横浜生まれ。明治大学で建築を学び、設計事務所勤務、欧州建築を巡る旅の後、2002年にタカトタマガミデザインを設立。現在、日本大学理工学部非常勤講師を兼任。手がけるプロジェクトの規模や用途は多岐にわたる。
2015年には作品集『TAKATO TAMAGAMI ARCHITECTURAL DESIGN』を出版。

中﨑隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー):
1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境(パッケージデザインから建築、まちづくり、都市計画まで)に関するプロジェクトの調査、企画、計画、設計などを総合的にプロデュースすること、建築・都市をテーマとした取材・執筆を職業としている。著書に『建築の幸せ』(ラトルズ)、『ゆるやかにつながる社会 建築家31人にみる新しい空間の様相』(日刊建設通信新聞社)、『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』(彰国社)『半径一時間以内のまち作事』 (彰国社)ほか。


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