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展覧会「ブルーインフラがつくる都市 -東京港湾倉庫論-」
を振り返って

2018年春から、Logistics Architecture研究会はAI、IoT、ロボット、自動運転などの技術の導入が進む物流が建築と都市を変えていくという問題意識をもち、建築、都市計画、物流、IT、社会学、地理学などの専門家をゲストに招き、物流の進化、建築と都市の変化のベクトルを展望するフォーラムを重ねてきた。

 

6回のフォーラムの実施を一つの区切りとして、東京港湾倉庫群エリアを対象に物流の進化、建築と都市の変化のベクトルを展覧会というかたちで示そうと考え、展覧会の理念とデザインを第1回のフォーラムのゲストであった建築家で早稲田大学准教授の渡邊大志氏に依頼した。

 

渡邊氏は海、航路、湾、港、川、暗渠をひとつなぎのものとするメタインフラを「ブルーインフラ」と総称し、東京港湾倉庫群エリアを展示の核の対象としながらも、自身の他の進行中のプロジェクトや構想などを加えた展示構成とした。その結果、展覧会のタイトルは「ブルーインフラがつくる都市-東京港湾倉庫論-」となった。

渡邊氏は展覧会の序文のなかで次のように記している。

 

「私たちが暮らす東京では、国際港である東京港が持つ十二の海洋交易路によって、倉庫や埠頭の位置、形状、担うべき都市/港湾機能が他都市の港湾倉庫群と連動しながら制御されています。海と陸の臨界線に立つ港湾倉庫群。それらが物資を呑み込み吐き出すまでの時差が経済空間としての都市を生み出し、ひいては人間の暮らしの空間の基盤となっているのです」。

 

東京税関の東京港貿易概況(速報)によると2017年分の東京港の輸出品金額の上位5つは自動車の部分品、電算機類の部分品、原動機、プラスチック、電気回路等の機器であり、輸入品の上位5つは衣類・同付属品、電算機類(含周辺機器)、魚介類・同調製品、肉類・同調製品、半導体等電子部品だ。

 

これらが東京港の港湾倉庫群が「呑み込み吐き出す」物資であり、特徴となっている。輸入品から消費型の経済空間が拡大していることがわかり、物流も「ラストワンマイル」などの消費型を進化させているのだ。

 

ちなみに財務省貿易統計によると2017年の日本全体の輸出品金額の上位5つは自動車、半導体等電子部品、自動車の部分品、鉄鋼、原動機であり、輸入品の上位5つは原粗油、液化天然ガス、衣類・同付属品、通信機、半導体等電子部品である。

 

東京港の臨海部は航路や港湾などを統括するシステムによって建築と都市が現われてくるエリアであるが、コンテナリゼーションなど統括するシステムの変化や産業構造の変化とともに土地利用も変化している。

 

港湾倉庫群の多くはタワーマンションなど住居地区や大規模商業地区に再開発され、消滅している。港湾エリアにも消費型の経済空間が拡大しているのである。一方で残された倉庫が新たなアクティビティによって、コンバージョンやリノベーションされ、小規模であるが、オルタナティブな空間に生まれ変わっている。

 

そして物流機能を失って久しい河川などのブルーインフラは観光などをテーマに再生が試みられている。

さて2019年秋からLogistics Architecture研究会はフォーラムを再開し、新たな物流の進化、建築と都市の変化のベクトルを展望する機会を提供する予定だ。

 

中崎 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)

■プロフィール

渡邊 大志(わたなべ たいし)/ 理念とデザイン
建築家。早稲田大学創造理工学部建築学科 准教授。
1980年生まれ。2005年早稲田大学理工学術院建築学専攻修了(石山修武研究室)。同年、同研究室個人助手。2012年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(伊藤毅研究室)。博士(工学)、一級建築士。2016年より現職。2019年秋よりフィンランド・アルヴァ・アアルト大学客員研究員。専門は、建築デザイン・都市史。
株式会社渡邊大志研究室一級建築士事務所主宰、世田谷まちなか観光交流協会委員、港区景観審議会委員。
主著に、『東京臨海論ー港からみた都市構造史ー』(東京大学出版会、2017年)など。作品に、「節会—倉庫と舞台」「空気のグロッタ」「酒井邸」など。

 

加藤 耕一(かとう こういち)/ トークイベント(対談)ゲスト
建築史家。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授。
1973年東京生まれ。1995年、東京大学工学部建築学科卒業。2001年、同大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。学位、博士(工学)取得。2002年、東京理科大学理工学部助手。2004年、パリ第4大学(パリ=ソルボンヌ)客員研究員(日本学術振興会海外特別研究員)。2009年、近畿大学工学部講師。2011年、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授。2018年より現職。
主な受賞歴は、サントリー学芸賞(芸術・文学部門、2017年)、建築史学会賞(2018年)、日本建築学会賞(論文、2018年)、日本建築協会第17回「建築と社会」賞(論考、2018年)など。
主な著書に『時がつくる建築-リノべーションの西洋建築史』(東京大学出版会、2017年)、『ゴシック様式成立史論』(中央公論美術出版、2012年)、『「幽霊屋敷」の文化史』(講談社現代新書、2009年)ほか。訳書にH.F.マルグレイヴ『近代建築理論全史 1673-1968』(監訳、丸善出版、2016年)、S.ウダール・港千尋『小さなリズム-人類学者による「隈研吾」論』(監訳、鹿島出版会、2016年)、J.-M.ペルーズ・ド・モンクロ『芸術の都パリ大図鑑―建築・美術・デザイン・歴史』(共訳、西村書店、2012年)などがある。
現在、10+1websiteにて「アーキテクトニックな建築論を目指して」連載中。

 

中崎 隆司(なかさき たかし)/ 企画
建築ジャーナリスト&生活環境プロデューサー。
生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆ならびに、展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。


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