2012年1月、日本の広告会社として初めて米国Advertising Age誌の「インターナショナル・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したTBWA博報堂(本社・東京都港区、座間一郎代表取締役社長兼CEO)。2011年の広告内容だけでなく、広告効果によるクライアントの業績の伸びなども評価された。
創造的な破壊をフィロソフィーとして掲げる同社は創業当初から、倉庫をリノベーションしたオフィス(東京都港区芝浦1-13-10 第3東運ビル5、6階)を利用し、2007年に日経ニューオフィス賞の経済産業大臣賞、クリエイティブオフィス賞を受賞。今年3月には、そのオフィスと同じ第3東運ビル1階にオフィスを増設した。倉庫をリノベーションしたクリエイティブオフィスから、次々と斬新なアイディアを生み出す同社の座間一郎社長にイーソーコ総合研究所の出村亜希子・一級建築士が、オフィス環境がスタッフのモチベーション、クリエイティビティに与える影響を聞いた(以下敬称略)。
出村:貴社は、クライン・ダイサム・アーキテクツがデザインした5・6階オフィス、吉村靖孝建築設計事務所が手掛けた1階オフィスと倉庫をリノベーションしたオフィスを利用されていますが、倉庫リノベーションしたオフィスはクリエイターにとって、どんな魅力があるのでしょうか。
座間:倉庫リノベーション物件の魅力は、なんといっても大空間です。壁や仕切りが少なく、レイアウトの自由度が高い。自由度の高いオフィスは、様々な業種の人間が集まり、コラボレーションしやすい雰囲気を作りだせます。当社は博報堂とTBWAの合弁会社ですが、TBWAの各国のオフィスは、それぞれクリエイティビティを刺激するユニークな空間作りをしています。ロサンゼルスのオフィスは、まさに倉庫をイメージしてデザインされたオフィスです。
出村:今年できたばかりの1階のオフィスは、明るい色彩とポップなデザインの5、6階オフィスに比べ、シックでモダンな雰囲気ですね。
座間:白、黒、ウッドを基調にしたシンプルなデザインです。90年代始め、ジュリアナ東京として当時のカルチャーの発信地だった場所が、モダンなデザインの新たなカルチャーを生み出すクリエイティブオフィスに生まれ変わりました。時代は変わっても、新たなカルチャーの発信源として活躍しています。
出村:無機質な倉庫の中に、その会社らしさを生かした個性的なオフィスが存在するというギャップが倉庫リノベーションの面白さでもあります。
座間:そのギャップが、まさしくクリエイティビティを刺激するのです。お客様が当社を訪問されて、倉庫ビルの外観とのギャップに「びっくりした!」と言っていただくのが、一番のほめ言葉ですね。築年数の経った倉庫ビルの中から、個性的なオフィスが現れることで、「ここで働いている人達は、おもしろいことをやってくれそうだ」と思っていただけているのではないでしょうか。
出村:そのクリエイティビティが、昨年末、アジア最大の広告専門誌『Campaign Asia Pacific』が主催するアワードの「クリエイティブ・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」(北アジア部門)、「エージェンシー・ヘッド・オブ・ザ・イヤー」(座間社長受賞)など数々の受賞につながっているのですね。
座間:オフィス環境は、スタッフのクリエイティビティ、モチベーションアップに大きな影響があります。行動様式まで変えてしまう大きな力があります。
出村:広い空間を生かした倉庫リノベーションオフィスを利用することで、社員間コミュニケーションも活発になります。
座間:5階オフィスの中心にカフェが設けてあり、そのカフェに社員が集まり、自然とコミュニケーションが始まります。役員も自分の部屋にこもらず、社員とフランクに交流しています。
また、一目で全体が見渡せるつくりですので、お客様が来社した時、そのお客様に関するプロジェクト以外の社員達の働く姿も見て、当社全体のエネルギーを感じてもらえます。
出村:オフィスでパーティも開催していらっしゃるとか。
座間:これだけの大空間ですから、わざわざホテルなど別会場に移動しなくても、ここでワークショップやパーティを開けます。自社オフィスでパーティを企画・準備することで、自分達のホスピタリティ(気配り、心配り)を発揮し、お客様をおもてなしすることができます。
出村:クリエイティブオフィスがテナントとして入居することで、ビルも地域も活性化すると感じています。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
<座間一郎氏 プロフィール>
1984年 博報堂入社
2003年 株式会社博報堂ジーワン副社長
2006年 株式会社TBWA博報堂 副社長兼第二営業局長
2009年 博報堂執行役員(非常勤)・株式会社TBWA博報堂 代表取締役社長 兼CEO
2012年 博報堂常務執行役員・株式会社TBWA博報堂 代表取締役社長 兼CEO