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Logistics Architecture -物流が建築、都市を変えていく-(13)

Logistics Architecture研究会第13回フォーラムは松井亮建築都市設計事務所代表の松井亮氏と、オーガニックデザイン一級建築士事務所代表の熊木英雄氏が登壇した。
松井氏は「OMRON AUTOMATION CENTER TOKYO」「OMRON AUTOMATION CENTER TOKYO POC LAB」「LIBRARIES」について、また熊木氏は「ミナモトラウンジスペース」「KAWAGISHI WAREHOUSE」「ReBar」について次のような概略のプレゼンテーションを行った。

「OMRON AUTOMATION CENTER TOKYO」(東京都港区)と「OMRON AUTOMATION CENTER TOKYO POC LAB」(東京都品川区)は、オートメーションテクノロジー企業のオムロンの工場自動化の最先端技術の体験・実証施設である。共にJR品川駅港南口エリアにある。

 

「OMRON AUTOMATION CENTER TOKYO」は、地上26階地下2階塔屋1階のオフィスビルの3階の約1100㎡を体験の場にリノベーションしている。

 

「OMRON AUTOMATION CENTER TOKYO POC LAB」は、地上7階建て倉庫の3階を共同実験室にコンバージョンしている。改修面積は約1900㎡、天井有効高は6mある。顧客企業と共に共同して検証・実証を行う。荷物用のエレベーター2基に面するエリアをホール&デモエリアとして大きくとるとともに個別ブースを配置し、例えばデモンストレーションやエキジビションなど、状況に合わせて使い方を変えることができるようにしている。またミーティングルーム、セミナールーム、リフレッシュルームなどを接続させる構成にし、空間を多様に使えるようにしている。コミュニケーションがとれる場所があることで情報交換や交流を促し、ものづくりの技術がより発展できる仕組みにすることを意図している。

 

「ミナモトラウンジスペース」は、埼玉県川口市にある。倉庫事業の事業承継に合わせて事務所スペースの一部をリノベーションした。用途は倉庫で働く人たちのための休憩室、更衣室、トイレなどであり、企業イメージの向上や人材確保などが目的である。休憩室の壁面は倉庫で使用される木製パレットをモチーフにしている。

 

「KAWAGISHI WAREHOUSE」は、埼玉県戸田市の物流不動産の事例である。倉庫事業の継承ができなかったため、平屋建ての梱包作業の倉庫の外観を変えずに用途変更している。内部空間の半分は建築設計事務所のオフィス、コーワーキングスペースを経て、現在は社会人ボートクラブのジムとして活用されている。

「LIBRARIES」と「ReBar」は、東京都港区にある8階建てオフィスビルの8階と3階の1部の改修である。

 

「LIBRARIES」は最上階の8階にあり、床面積は約1300㎡である。窓際に設置した組み立て式の10の本棚と会議室、セミナールームからなる。10の本棚は空間を体験の機会をつくることを目的に「図書館」をテーマにした展覧会に活用された。セミナールームは家具と40種類のレースをつなぎ合わせたカーテンで構成している。カーテンには床からの反響を低減させる役割も持たせている。

 

「ReBar」は、3階の窓際の1部を改修したセミナールームである。水色を基調した空間であり、ここからフロア全体の色が変わり、影響し合っていくことをイメージしてデザインされた。間仕切り壁の存在感を無くすことを意図し、白く塗った鉄筋のメッシュを間仕切りに使用している。

 

中崎 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)

【プロフィール】
松井亮(建築家・松井亮建築都市設計事務所代表):
2004年に東京芸術大学大学院修士課程を修了、同年に松井亮建築都市設計事務所を設立。これまで手掛けた主なプロジェクトは、ミラノサローネのインスタレーション「Overture」,東日本大震災で損傷した蔵を改修した集会場「Rebirth House」,羽田空港の和食専門店「Hitoshinaya」,学校林の木で設計した木造校舎「自由学園みらいかん」,城崎温泉の文化発信拠点「さんぽう西村屋本店」等がある。主な受賞暦は、AR House Awards 2015 / Highly Commended・次点(英),CONTRACTWORLD AWARD 2010 / 最優秀賞(独),AIT AWARD(独),Restaurant and bar design awards(英),グッドデザイン賞 / BEST 100(日),JCDデザイン・アワード / 金賞・銀賞・ 審査員賞(日),JID AWARD(日),他多数。

 

熊木英雄(建築家・株式会社オーガニックデザイン一級建築士事務所主宰):
1971年埼玉県生まれ。明治学院大学社会学部卒、工学院大学工学部都市建築デザイン学科卒、上智大学大学院地球環境研究科卒。
1999年有限会社西森事務所入所、2004年Foster And Partners, London, UK入所、2006年Future Systems, London, UK 入所、2009年熊木英雄建築事務所設立、2015年株式会社オーガニックデザイン一級建築士事務所名称変更、2017年~現在 工学院大学建築学部建築デザイン学科非常勤講師。
受賞歴は2022年 11th SPACE DESIGN AWARD Grand Prix 受賞(Public.Co.LTD.主宰)、2020年Architizer A+Awards 受賞2部門(USA)、2020年IF DESIGN AWARD 受賞(Germany/Euro)、2019年 SKY DESIGN AWARD 受賞(香港/ASIA)、2019年Building Of The Year受賞(ArchiDaily)、2017年 板橋区環境活動大賞・緑のカーテンコンテスト グランプリ、2015年 埼玉県環境住宅賞(埼玉県住まいづくり協議会)、2013年 住まいの環境デザイン・アワード「緑のカーテンの家」 (東京ガス)、2013年 Good Design Award「緑のカーテンの家」(公益財団法人日本デザイン振興会)、2012年ARIAFINA KITCHEN DESING AWARD (アリアフィーナ)、2012年 HOPE&HOME ~住宅雑誌8誌が選ぶこれからの住まい~。

 

中崎隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー):
生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆ならびに、展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会‐建築家31人にみる新しい空間の様相‐』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。