SOHKO RENOVATION MAGAZINE

CASE STUDY

事例

倉庫ビルで考える
[空間づくり]の未来

Laboratory, Multi space & Studio

 文化施設やオフィス、店舗などの空間づくりを主業とする丹青社。昨今は単なる内装構築だけではなく、空間を通じた課題解決やイノベーションにつながる提案を求められると言う。どんな空間が最適か、空間をどう使えばいいのか。空間づくりを通してソリューションを提案し続けるための「考える場・実践の場」として開設されたのが、「港南ラボマークスリー[Mk_3]」だ。

 港区港南に立つ倉庫ビルの一角。案内された階でエレベーターを降りても、入り口が見当たらない。黒塗りの壁にセンサーらしきものを見つけ、思案していると急に壁が開いた。施設は会員制で、会員になるとメインの大きな扉を解錠できるという。内部には複数の監視カメラが設置してあり、セキュリティも保たれている。
 中に広がるのは300㎡ほどの、「Mk_3ラボ」と呼ばれる空間。プレゼンテーションやものづくり、懇談といった用途ごとのスペースが仕切りの無いゆるやかなゾーニングでつながっている。
 ラボと聞くと研究者たちがさまざまな機器を操作して実験している、そんなイメージがあるかもしれない。確かにここにもさまざまなものが置いてある。が、よく見るとゲーム機であったり巨大なタッチパネルであったり、アート作品であったり、壁一面をスクリーンにしたプロジェクターであったり。3Dプリンターなどもあるが、そこかしこに置かれたそれらは実験のための機器というより、遊び心を刺激するようなものばかりだ。新しい空間づくりの発想を生むためという意味では、これらもラボの実験機器と呼べるのかもしれない。

 内装は打ち放しのコンクリートに白い塗装を施しただけのシンプルなもので、ここを使う人が自由に活動できるようあえて控えめに設えたという印象だ。あちこちに置かれたものたちも常に入れ替わったり移動したりするという。だが雑然としてはおらず、むしろ統一感すらある。それこそがこの空間のコンセプトにつながっているのだろう。
 丹青社が意図した「港南ラボマークスリー[Mk_3]」の使い方は、同社の社員はもちろんアライアンスを結んだ企業やクライアントなどさまざまな人々がアイデアを持ち寄り、プレゼンテーションやワークショップ、ブレインストーミング、試作などを通じて新たな創造につなげること。発想やイノベーションが生まれることを主とし、「新たな空間づくり」は前面に出していない。自由な発想のために好きに使える空間を身上とし、入り口をわかりにくくしたのも秘密基地のような感じを意図したものという。そう言われてあらためて入り口を見ると、茶室のようなにじり口があるのに気づく。促されるままそこをくぐって廊下をはさんだ向かいにあるのが、「Mk_3スタジオ」。グリーンバックのステージにカメラや映像調整機器などを持ち、配信のほかさまざまなシミュレーションやイベントにも使われる「港南ラボマークスリー[Mk_3]」のもう一つの顔だ。ここはやはり、遊び心を多分に持った秘密基地のようだ。

 「港南ラボマークスリー[Mk_3]」は、空間演出技術の開発や研究を目的に丹青社が設立した専門チーム「クロスメディアインキュベートセンター(現クロスメディアイノベーションセンター)」のもと2018年に開設され、2022年に「Mk_3スタジオ」を増床した。

 施設の開設にあたって考慮したのは「品川駅港南口にある丹青社本社との位置関係」と「使い勝手のいい空間かどうか」だったという。丹青社執行役員でセンター長の若松正人氏は「そもそものきっかけは、丹青社の事業内容をクライアントにきちんと説明するための施設がなかったことです。あわせて、パートナー企業とのオープンイノベーションの場と、社内向けの発信の場もあればということで、こうしたかたちになりました」と振り返る。複数の機能を集約しつつシームレスにつなぎ、空間構築という主業に結び付ける。そのための場として、倉庫ビルの大空間がぴったりだったという。

 「Mk_3(マークスリー)」という名称には、改良型を意味する「MkⅡ(マークツー)」のさらに先へ向けた価値を生み出すという思いが込められている。
 港区港南1丁目の本社から3丁目の Mk_3 へ。未来を考えるための道は、倉庫ビルへと至る。

株式会社丹青社
港南ラボマークスリー[Mk_3]
東京都港区港南3-4-27 WAREHOUSE Konan 2F
https://mk-3.com/

取材・文:久保純一(イーソーコ総合研究所)
公開:2026年8月26日
※掲載内容は取材当時のものであり、現在とは異なる場合があります。