世界とつながる東京国際空港(羽田)と日本全国につながる東京駅のラインに沿った地域は日本全体のターミナルエリアであり、その真中に位置する品川駅・田町駅周辺地域はポテンシャルの高い地域だ。
品川駅・田町駅周辺地域の将来計画として山手線の新駅計画、リニア中央新幹線の東京都ターミナル駅計画、アジア・ヘッド・クオーター特区構想などがあり、さらにウォーター・フロントを挟んで2020年開催の東京オリンピックのベイ・ゾーンがある。
このエリアを構成する地区のひとつである芝浦地区は倉庫街という歴史があり、その歴史を継承し、地域を再生する核となる可能性を秘めた倉庫が残っている。
2014年4月、この倉庫という地域のインフラをリノベーションし、10年後、20年後の芝浦地区を中心とした品川駅・田町駅周辺地域およびウォーター・フロントの未来を豊かに創造していくことを目的とした「倉庫リノベーション研究会」が発足した。
4月3日の第一回研究会は建築家の隈研吾氏をゲスト講師に招いた。隈氏は海外で手掛けている倉庫や工場のリノベーション・プロジェクトの解説を中心にリノベーションの可能性について次のような内容の講演をした。
「建物本体でできることは限られており、周辺の環境を整備することがリノベーションでは大事なことだ。周辺の環境を含めて再生させると本体も特別なものに見えてくる。また建物に使われていた材料を再利用してつくることも大事であり、昔のものがあるとゼロからつくったものとは違う何かを与えてくれる。
古いものと新しいものが重なることで古いものは良くなる。そういうマジックが建築にはある。1960年代、70年代の建物は価値がないとみられていたが、そういうものに対する若い人の感性はするどくなってきており、変わってきている。
品川・田町地区全体が東京の新しい玄関として再生されようとしている。水辺が近いということは資産であり、この場所の持っているポテンシャルはいま考えているもの以上のものがある。地政学的な特性と地形的な特性をうまく生かしてこの地区の持っている資産を再利用するとものすごくおもしろいものになる。東京に興味のある外国人も注目しており、このウォーター・フロントは可能性がある」。
古い倉庫に新しい命が吹きこまれていくようなきっかけをつくっていく。ウォーター・フロントという地域の資産を魅力的な空間として再利用していく。地域が変わり、働いている人や生活する人がいきいきとする。そのような目標を研究会のメンバーが共有し、地域や社会から期待感が生まれるような活動にしていきたい。
中﨑 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)
<プロフィール>
隈研吾(くま けんご)
建築家・東京大学教授
1954年神奈川県生まれ。東京大学大学院建築意匠専攻修士課程修了。1990年隈研吾建築設計事務所設立。2009年より東京大学工学部建築学科教授。
代表作に「登米町伝統芸能館」(1997年日本建築学会作品賞受賞)、「那珂川町馬頭広重美術館」(2001年村野藤吾賞受賞)、「根津美術館」(2010年毎日芸術賞受賞)、「梼原・木橋ミュージアム」(2011年芸術選奨文部科学大臣賞受賞)がある。近作に長岡市シティホールプラザアオーレ長岡(2012年)、浅草文化観光センター(2012年)、GINZAKABUKIZA(歌舞伎座と歌舞伎座タワーの複合施設)などがあり、海外のプロジェクトも多数進行中である。
中﨑隆司(なかさき たかし)
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー
1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境(パッケージデザインから建築、まちづくり、都市計画まで)に関するプロジェクトの調査、企画、計画、設計などを総合的にプロデュースすること、建築・都市をテーマとした取材・執筆を職業としている。著書に『建築の幸せ』(ラトルズ)、『ゆるやかにつながる社会 建築家31人にみる新しい空間の様相』(日刊建設通信新聞社)、『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』(彰国社)、『半径一時間以内のまち作事』 (彰国社)ほか。
倉庫リノベーション研究会の詳細はこちら▼
http://www.value-press.com/pressrelease/127346