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「お客様のために進化する」みんなの仕事場

倉庫リノベーションの中でも特に需要が多いのが、空間デザインに優れたオフィスだ。様々な仕事場の空間事例と空間づくりのプロを探せるコミュニティサイト「みんなの仕事場」。この「みんなの仕事場」は、「お客様のために進化する」というアスクルの企業理念から生み出された。新しいオフィス、新しい働き方を紹介することで、日本企業、経済を活性化したいという熱い想いで運営されている。オフィスの作りに思想があり個性に溢れたオフィス事例の紹介から、デザイナー・建築家の紹介、ビジネスマッチングなどへ機能を拡張し、成長する同サイトの製作現場とアスクルのオフィスを訪ねた。

「みんなの仕事場」は、仕事場づくりのコミュニケーションの場、仕事場を見たい人と見せたい人が閲覧・投稿、つくりたい人と建築家・デザイン会社やメーカーが出会い、コミュニケーションの場を提供する新しい発想のコミュニティサイトとして独自のポジションを築いている。
オフィスをはじめ店舗や宿泊、医療、教育施設などの事例紹介から、仕事場づくりのパートナーを探せる場の提供やプロとメーカーが業務用家具を直取引できる場の提供など様々なサービスを展開している。同サイトは、アスクルがオフィス家具の通販事業を手掛ける中で、オフィス設計を依頼されるケースが増えてきたことがきっかけで誕生した。3、4年前まで、企業独自の個性を打ち出したオフィスは、一部建築雑誌などで紹介されていたが、オフィスをつくりたい人が気軽に情報を集めたり、事例などの情報を収集できる場がではなかった。そこでオフィスをつくる前に、様々なオフィスの事例を見てみたいという顧客ニーズに対応するため、オフィスをつくりたい人、オフィスに興味がある人が集まる場を提供するコミュニティサイトとして2008年にスタートした。
スタート当初は、まずは、なるべく多くの事例を掲載することに徹した。サイト運営の担当者がお客様を1件ずつ取材し、プロジェクト担当者、経営者のオフィスに込めた想いを伝えてきた。たちまちサイトは評判を呼び、仕事場づくりのコミュニティ&サービスサイトへと成長した。

同サイトの中心メンバーであるみんなの仕事場事業推進部長の宮本英治氏は、「空間デザインに優れたオフィスを望む経営者は、『オフィス作りはコストではなく、投資』と考える方が多く、それらは社員のモチベーション向上、生産性向上につながる。当社サイトでの事例掲載後は反響も大きく、オフィスをさらに拡張したり、その企業の採用など会社PRの場として活用したりする例も出てきている」と話す。
「大企業並みのサービスを中小企業にもお届けするというのが、当社の創業の理念。オフィスに必要なモノやサービスをお届けしてきた当社は、オフィスづくりに関しても、今までにないソリューションを提供したいという想いが強かった」という。
また、オフィスを作りたい企業へ情報を提供するだけでなく、オフィスを作る企業のビジネスチャンスも拡大。デザイン会社は無料で自社の仕事場を公開できるほか、「みんなの仕事場」をご利用いただいているお客様からそれらデザイン会社に仕事の発注を依頼出来るなどのマッチング機能も備えている。

2012年8月に家具の卸・仕入れ機能「仕入れ市場」を追加した。プロ会員として登録するだけで、オフィス家具メーカー、オフィス通販カタログでおなじみのメーカーなど多数の出店社へ、オンライン上で、直接見積もり依頼、注文ができる。
デザイナーはオフィスをデザインするとともに、家具、雑貨の提案も一気通貫ででき、ビジネスチャンスを広げられる。大企業は、オフィス家具をメーカーと直接やり取りし、大量購入で価格を下げて仕入れることができるが、一般的に中小企業は限られた取引先から購入することが多かった。しかし、みんなの仕事場の新機能を利用すれば、多くのメーカーから顧客のニーズにあった商品を調達し、デザインから調達までワンストップでサービスを提供できる。倉庫リノベーションを手掛ける場合でも、こだわりの家具を提供できる同サービスを利用できるメリットは大きい。

 

そうしたアイディアが生まれるアスクルのオフィス(東京都江東区豊洲)は2011年9月の移転を機に「お客様の声が聴こえるオフィス」をテーマにつくられた。臨場感ある会話、笑顔が飛び交い、顧客ニーズ、市場動向をキャッチする「live market center」だ。ヒエラルキーを感じさせない、コミュニケーションが活発に行われるクリエイティブオフィスとして、アスクルのビジネスを支えている。

最近では「かさばる日用品を宅配購入で課題解決」をテーマに、生活必需品からトレンド商品まで16万アイテム超取り揃えた個人向けECサイト「LOHACO」(ロハコ)をヤフーと協力してスタート。法人だけでなく個人向け通販サービスを本格展開することで、より顧客サービスを充実させていく考えだ。
スマホ、タブレット版が10月15日先行オープンし、パソコン版は11月20日に開設した。「くらしをかるくする」をスローガンに、新しいネットショッピングを提案している。
まさに「クリエイティブオフィスづくりはコストではなく、投資」を実現しているアスクル。今後も、このクリエイティブオフィスから生み出される日本の中小企業、経済を活性化するビジネス展開から目が離せない。

(鹿野島 智子:イーソーコ総合研究所)