「健康」「安全」「教育」をキーワードに3つの事業を展開する三和製作所。医療機器や防犯・防災用品、学校教材の製造販売を行う同社のオフィスは、「モノとヒト」の融合がキーワードだ。
2019年7月に開設した新本社オフィス。それまで複数に分かれていた物流拠点を集約するとともに、新たな機能を付加してイノベーションを起こしたい。移転を決意してからさまざまな物件を巡るなか、求められる機能を満たせる建物として選んだのが、東京湾の最奥部・市川に立つ倉庫だ。
倉庫街でありながら、最寄駅から徒歩3分。鉄道でもクルマでも25分ほどで都心まで出られる好立地の、ワンプレート350坪。築約35年の5階建て倉庫を1棟賃借し、1~4階を倉庫とものづくりスペース、5階をクリエイティビティにあふれたオフィスとし、合計1500坪に約120名のスタッフが常勤する。
物件を探すうえで大きな条件となったのが、おとなりの船橋市にあった旧物流センターからの距離。同社代表取締役社長の小林広樹氏は「旧物流センターで働き慣れた従業員さんに、そのまま継続して働いてもらいたかったんです」と話す。だから通勤の利便性は、最重要項目のひとつでもあった。
気持ちよく働ける場所に。その思いは、無機質だった倉庫部分の内装にも変化を及ぼした。
倉庫部分は、1~2階の吹き抜けがトラックヤードをもつ物流センター、中2階が休憩室、3階が製品の組み立てなどを行う製造部、4階は製品を保管する物流部が置かれている。一見似たような業務を行っているように感じるかも知れないが、実際にはそれぞれ必要とされる導線は異なる。そこで、従業員とともに各階のゾーニングを構築。柱やエレベーターの色も階ごとに塗り替えた。視覚的にアクセントを加えることで、「機能」と「場」を結び付けている。
5階は同社の核となる本社機能が置かれる。フロア全体を「トライアングル・ラボ・01」と名付け、単なる執務スペースにとどまらない「クリエイティブな場」と位置づける。
トライアングルという名称は、建物の立地に由来する。JR京葉線と武蔵野線の線路で仕切られた街区は、上空からみると三角形。このカタチに前述の3つのコンセプトを重ね合せ、さらに「ゼロから1へ」という思いを込めた。
5階に足を踏み入れると、白を基調とした明るい空間が拡がる。木目調のファニチャーの合間に植栽を配し、カフェのような雰囲気。
エントランスから奥へと人をいざなうように架けられた木製ブリッジは、その名も「ハートブリッヂ」。同社で展開する、障がいを持ちサポートを必要とする子どもに向けたブランドと同じ名前をつけた。ブリッジをわたったところにある「ハートブリッヂガーデン」は、サポート用品の体験やさまざまなイベントに使用できる空間。小林氏は「障がいや苦手なことがある子どもと、その家族の交流の場になればと考え、つくったスペースです。みんなの想いの架け橋になれれば」と話す。
奥に拡がるオフィスでは、約60人が働く。従業員の連携や風通しを意識し、部署ごとの仕切りが無いオープンスペース。完全個室の会議室のほかブース型のミーティングスペースも設け、メリハリのある業務を可能としている。
従業員用のリフレッシュルームも設けた。テーブル席やソファ席、窓辺のカウンターなど座席に変化をつけ、気分転換にも有効そうだ。
「実は、ここで一番やりたいのが『商物一体』なんです」。小林氏は、営業拠点と物流拠点を一体化するメリットを強調する。
「例えば、営業スタッフが得意先を回っているときに見つけたニーズや顧客からの要望をどう実現するか。この新拠点では、物流と一体化していることですぐに『解決できるモノ』と結び付けることができます。さらにサービスや商品の改善・改良に繋げることで、よりスピード感を持ってお客様ファーストを実現することができるようになりました。商いと物流、ヒトとモノが一緒になったことで、できることはさらに大きくなりました」。
物流とビジネスの、新しい融合のカタチ。その1歩めは、東京湾のてっぺんにあるトライアングルからはじまるのかもしれない。
三和製作所
トライアングル・ラボ・01
千葉県市川市原木
https://www.sanwa303.co.jp/