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Office,Workplace,Café,Shop,Gallery and many more
空き工場から始まる、新しい町のあり方

中小の倉庫や工場が点在する住宅地に、マンションがそびえる。大阪の町並みの典型のような景色が広がる中津は、梅田からも徒歩圏という交通利便性に恵まれたエリア。しかしながら人を呼び込めるような施設がなく、アイデンティティも薄い。そんな、「目的地にはなりにくい町」の空き工場兼倉庫をリノベーションした「N6(エヌロク)」は、地域の核となることを目指した多目的複合施設だ。

建物は中2階つき3層(2階建)の延床面積643㎡。内装デザインや施工を展開するノットコーポレーションが借り受け、2021年3月に自社運営の施設として生まれ変わらせた。施設のテーマは、「つくる、つなぐ、つどう」。

1階と2階の一部には、「KNOT MARKET PLACE」がオープンした。ベーカリーカフェとセレクトストア、ギャラリーにもなるイベントスペースからなる、施設の核となる部分だ。4mもの天井高を持つ1階のベーカリーカフェでは、店内のオーブンで焼くパンや「No Border」をテーマにした無国籍でカジュアルな料理が味わえる。鉄骨の梁の下は、「日常的でありながら非日常感が味わえる」というカフェのコンセプトを具現化した空間。工場を髣髴とさせる内装に観葉植物や木製のファニチャーが暖かみを添え、中2階のギャラリー兼イベントスペースは壁一面にイラストが描かれている。トラックが出入りしていた開口部にはテイクアウト用のカウンターが設けられ、道行く人が気軽に寄っていく。よく見ると、カフェのチェアは物流パレットのかたち。

しかしこの1階のカフェは「N6」という世界観への入り口であって、本質ではない。

1階の奥は内装フィルムのデザインや施工を行うグループ会社の工場兼倉庫。2階は商業施設の看板や装飾品、販促品、ユニフォームなどのデザイン・製作を展開するグループ会社の作業場兼オフィスだ。

オフィスと工場と商業、それぞれの機能が互いに作用して、人を惹きつける。町の人々とともにここに集い、創り、そして繋いでいく。この施設の目的は、あくまで町の賑わいの核となること。ノットコーポレーションの代表取締役CEO・河内道生氏は語る。

「『N6』は、カフェやショップの運営が目的ではないんです。もともと内装フィルムのデザインや施工を行うグループ会社の作業場を探していて、この建物も以前から知っていたんですが、縁があって紹介してもらったのが始まりです。作業場だけでは広いですし、以前から町のためになる取り組みをしてみたいという思いがあって。ここなら地域の核になるような施設ができるかな、と」

大阪の中心地に接していながら発信できるような個性がない、そんな中津という町の特性も、ちょうど良かったようだ。「僕も大阪生まれですが、大阪には感度の高い人が集まる町があまり無いんです。『エヌロク』という名前も、中津をそんな人たちが自然と集まるような町にしたいと思って付けました」(河内氏)

大阪には「天六(てんろく)」や「上六(うえろく)」など、「〇〇ろく」と呼ばれる地域がいくつかある。天神橋筋6丁目や上本町6丁目などの略称だが、いずれも多くの人が行きかうにぎやかな町だ。「この中津6丁目も、そんな町にしたい」(河内氏)。そのための構想もコンテンツも揃っているが、その一方で町の人にどう受け取られるかはあまり想定していないともいう。町の方向性は、住み、集い、訪れる人々が決めるもの。「エヌロク」という呼び名が、建物ではなく地域全体を指すようになったとき。中津は、どんな人が住み、どんな人たちが集う町になっているのだろうか。

株式会社ノットコーポレーション

https://www.knot21.jp/

 

ノットコーポレーション N6
大阪市北区中津6丁目

https://www.knotmarketplace.com/

 

メイキング動画

https://www.youtube.com/watch?v=_05YPG4-3nI