「新しい空気を感じるような展示スペースを関東にも持ちたくて」と語るのは、名古屋を拠点にインテリアの製造卸販売を行う東谷(あづまや)株式会社の専務取締役・東谷敏弘氏。倉庫を主体とした複合ビル「WAREHOUSE Konan」内にオープンさせた「品川ショールーム」についての言葉だ。
展示スペースは予約制で、利用できるのは小売店などのプロのみ。室内はアメリカンビンテージをコンセプトとした完成度の高い空間だ。ビンテージテイストは昨今若者に人気だが、実際に使われ時代を経た家具や小物は決して安くない。結果としてビンテージっぽさをハンドメイドで再現した製品に人気が集まっているが、しかしそれは本物のビンテージではない。こうした層に本物のビンテージを低価格で提供するのも、展示スペースのコンセプトのひとつという。若い人に本物の良さを知ってもらいたい、卸販売を通じて本物のビンテージの良さを発信したいという思いがカタチとなったのが、この展示スペースだ。
アメリカンビンテージをベースにモダンテイストをプラスした展示スペースには、ミッドセンチュリー以降の家具や小物を多く展示し、古き良きアメリカの家庭の雰囲気を現代的な感覚で表現した。ショールーム内に並ぶ商品の多くは一点もので、アメリカで買い付けてカリフォルニアにある倉庫に保管し、必要なぶんだけ運び入れるのだという。内装も倉庫のような雰囲気が漂うが、この建物自体もともとは倉庫。倉庫のもつプリミティブさやインダストリアルさはビンテージとの相性がいいが、しかし展示スペースは倉庫である必要はなかったのだという。
倉庫はその雰囲気のほかにも高い天井や無柱構造の大空間、床荷重などアドバンテージは高い。だが東谷氏は「大きなエレベーターがあるのは助かっていますが、特に倉庫にこだわったわけではありませんでした。どんな物件でも格好よく見せる技術は、一応ありますから」と笑う。重視したのは交通利便性と駐車場の有無、それとコストパフォーマンス。実際には東京23区内で上記の条件に合う物件は限られるし、少し無理をしてでも原宿や青山にだしたいという声もあったという。それでも同社は、湾岸の倉庫街を選んだ。「都心部はすでに使いつくされた感があります。その一方で湾岸はこれから発展していくエリアです。何より私たちのテイストに合う、より格好いいエリアは湾岸の倉庫街でしょう」と東谷氏。
築年数の経過した倉庫がもつ、独特の使い込んだ格好よさは十分認めている。そのうえエリアの将来性まで見越した結果が、「WAREHOUSE Konan」というわけである。
一見しただけではわかりにくいが、実はこの展示スペースはオフィスとしての役割ももつ。室内にはパソコンが置かれたワークスペースが数か所、雰囲気に溶け込んだ自然な形で設置されている。イメージはアメリカの一般家庭のガレージの作業場といったところ。常に5~6名が常駐し、東京の営業拠点としての機能を果たすという。完成された空間で働くところを見せる、一種のライブオフィスでもあるのだ。
同社が最も大切にしているのは、顧客との共感。人と人との交わりのなかで商売を楽しみ、顧客の喜びを自分たちの喜びにつなげる。ここはまさに、気心の通じ合う顧客と商売を楽しめる場所なのである。
東谷東京営業所 品川ショールーム
東京都港区港南