創造的オフィスの重要性がいわれるようになってからずいぶん経つ。生産性が向上するオフィスに、創造性を高めるオフィス。最近では発信力のあるオフィスや訴求力のあるオフィスなんてこともいわれるようになってきた。
プロダクトデザインに関わる業務を幅広く手がける「&(アンド)デザイン」。そのオフィスはまさしく創造的だ。
芝浦に立つ倉庫ビル「第3東運ビル」にある&デザインのオフィスは、大きくわけて3つのエリアからなる。オフィスのコンセプトは「必要な機能がゆるやかにつながって、相互に作用すること」。それを聞けば、このレイアウトにはすぐに納得がいく。
入ってすぐ拡がるのが、開放感のある多目的スペース。ミーティングやコワーキング、ちょっとした息抜き、さらには製品のお披露目などフレキシブルに活用できる空間だ。
頭上にはカーテンレールが走り、そこから下がるカーテンを引けば執務スペースや通路と簡単に仕切ることができる。カーテンは表と裏の色を変えたメッシュで透過性が高く、圧迫感はない。素材を活かしたシンプルな色合いを基調とするこの室内で、淡いイエローのカーテンはちょっとしたアクセントにもなっている。
執務スペースは明るい窓際で、同じ方向にデスクが向いた特徴的なレイアウト。同社の南出圭一氏は「窓にデスクを向けるはずが、サイズが合わなくて」と笑う。「それに、この方が集中できるんです」。
思い通りにならないことも、見方を変えればプラスになる。ものづくりやリノベーションに共通する思考かもしれない。
奥にあるのがものづくりのための空間、工房だ。有孔ボードを張りめぐらせ、棚やフックの追加など拡張性を持たせるなど使い勝手にも配慮。壁沿いには工具や3Dプリンターが並ぶ。プロトタイプは、ここで生まれる。
「ものづくりはなれていますので、最初は自分たちでリノベーションしようかと考えていたのです」と話す南出氏。高築年のビルをリノベーションしたオフィスは、当たり前のように選択肢にあったという。
同社が以前に居を構えていたのは、東日本橋。高築年の建物をリノベーションで蘇らせた先駆的事例として知られるビンテージビルだ。その著名なビルからの移転を決意し第3東運ビルに出会うまで、およそ1年が経過していた。
移転の条件は、意外にもロケーションと広さのみ。魅力的な街にあって、増員した社員と製品在庫を収めることができる、そんなビル。多くのクリエイターが拠点を置く東日本橋から見た芝浦の倉庫街は、強く惹かれるものがあったという。
「自分たちで手を入れるのなら、ネイキッドな状態の方がいい。当然、倉庫ビルも選択肢にありましたし、むしろ普通のビルより格好いいと思っていました。倉庫部分に在庫も置けますし、このビルを知ったときはすぐに『ここだ』と」。
デザインの現場に立つ南出氏が選んだ、築40年超の倉庫ビル。クリエイティブな業務を支えるこのオフィスには、デザインを生み出すために必要なモノもコトも、ぜんぶが詰まっている。
photo by yuki tamagawa
アンドデザイン株式会社
東京都港区芝浦
http://www.anddesign.jp/